暴走

■飼育個体の増加
私自身、初めてポリプテルスを飼った経緯は、熱帯魚の総合誌の片隅に写るセネガルスになんとも表現のしがたい魅力を感じ、
軽い気持ちで導入しました。
その頃は、インターネットで魚の飼育方法を調べるというような考えもなく、本当に何も考えずに、20cm弱の魚なんてかんたんに飼えるだろうし、特別な設備も必要ないだろう。そんな軽い気持ちでした。
ポリプテルスの寿命なんてものも知りませんでしたし。

それからあれよあれよという勢いで、たくさんのポリプテルス、大きな設備と手を出していくことになります。
魚を増やしているときは、ものすごい勢いで、周りが見えませんから、バンバン増やして行くわけです。

初めの頃はポリプテルスについても明るくなく、熱帯魚店めぐりをして、違った種類のポリプを見つけては買い、
また、自分のお気に入りの種類であれば、自分が飼育している固体とは雰囲気が違うと思っては増やし、
そうこうしているうちに水槽はいっぱいに。

その頃にはだんだん目が肥えて来るのもあり、インターネットで検索してみると、今ほどたくさんのサイトはありませんでしたし、
ブログなんてものも普及していませんでしたが、(ブログの歴史はいつからか知りませんが)
数少ないポリプテルスの紹介をしているサイトの写真を見ては、世の中にはこんなにかっこいい個体がいるんだと思い、
自分の個体がだんだん貧相に見えてきて、よりすばらしい固体を求めて、熱帯魚店を駆けずり廻りました。

その結果、これ以上増やせないと判断したときに、どうしても欲しいと思った固体にめぐり合った先に待っているのは、
今まで飼育してきた個体の飼育放棄です。
今まで飼っていたデルヘッジよりももっと格好のいいバンドをした個体を見つけたとき。
大きくならないセネガルス、
無理な混泳をさせてしまい、ストレスを溜めさせる結果になってしまった、ガーパイクやダトニオなど・・・

殺処分なんて出来ませんし、もちろん密放流も出来ません。
熱帯魚店に引き取ってもらうことになりますが、喜んでそのようなはねられた魚を引き取ってくれるようなお店などありませんし、
引取りをお願いするにもものすごく気が引けます。
その上、よく行くお店にはあまり迷惑はかけたくないという気持ちもあり、どのような熱帯魚でも買い取るという触れ込みの
買い取り専門店を探し出し、車で片道3時間かけて売りに行った事もあります。
買い取り金額なんて、ガソリン代と車中での飲み物、高速代でチャラになってしまう程度のものですが、
買い取ってくれるというだけ、お店に対する後味も悪くなく、実際には飼育放棄しているにもかかわらず、
何か後ろめたさのようなものも少しやわらいだ感じがして、なにか逃げ道を作っていたような感じです。
買取店を後にするときは情けないような気でいっぱいになりました。

■飼育設備の増加
ある程度落ち着いてきて、ふと気が付いたとき、確実に魚たちが大きくなっています。
そこでの選択は、飼育設備の増加。新水槽の設置です。
ここでも、周りが見えていません。勢いに乗って、自分の家に置くには常識的とはいえぬ水槽などを設置してしまいます。
(我が家はマンションの4階です)
水槽を設置した分、また馬鹿みたいに魚も増やしてしまうんです。学習能力のかけらもありません。
水槽設置後は勢いもあり、何の心配事もしていませんが、
ふと気が付くと、どんどん魚の飼育を断念、規模縮小を迫られた人たちのことを思い出します。
当たり前ですが、今の生活は恒久的なものではないんです。
進学、就職、結婚、出産、病気、怪我、転勤、転職、失業。
ありとあらゆる環境の変化が待っているんです。
資産がうなるほどあって、孫3代まで遊んで暮らせるような方には関係ないかもしれませんが、
普通に働いている月給取りにとっては、大きな試練です。

大きな設備を泣く泣く処分した人も多く知っています。
引越しに連れて行くことが出来ずに飼育を断念した人なども・・
ゴルフや、釣り、スノーボードなど、もう行かなくなったからと、売ったり捨てたり簡単にできるものではありません。
ここでも付いてくるのが飼育放棄です。
オークションにかけられる個体というのは、本当にすばらしい固体や、珍しい産地のものくらいで、
20cmのセネガルスやパルマスを梱包量や送料を払ってまで買いたいと思う人が世の中にどれだけいるでしょう?
飼育者の環境の変化による飼育放棄は仕方がないものだとは言え、起こしたくないものです。

■環境問題
私もそうですが、熱帯魚飼育者はよく「1月の電気代が何万円も来た!」などと口にします。
普通に生活するうえでの電力消費の2倍や3倍は当たり前の感覚です。
また、私の場合ですが、毎月の水換えに2tの下水を流し、2tの水道水を垂れ流しします。
つくづく環境に優しくない趣味だと思います。


また、死んでしまった魚の処理ですが、普通なかなか焼却処分など出来ません。
死んだ魚の体内にはどのような病原菌や寄生虫が潜んでいるかわかりません。
遠い異国から来た魚の死骸を猫やカラスがあさって食べてしまい、ウィルスなどが突然変異を起こす可能性はないとは言い切れません。公園の土に埋めるという行為はとんでもないことですのであってはならないことだと思います。

ネガティブな話ばかりですが、すべて私が今、目の当たりにしている現実です。
果たしてこれから、飼育放棄することなく魚の寿命まで飼いきることが我々にできるでしょうか?